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2019.01.17

2019年 今年もよろしくお願いいたします

2019年 今年もよろしくお願いいたします

2019年1月も半ばをすぎました。遅ればせながら、皆さま今年もよろしくお願いいたします。

日本のお正月から2月にかけては、寒くも気持ち良く晴れ渡った日が続きます。年が改まり、気持ちがピリッと引き締まるのは、そんな快晴で、雲ひとつない青空によるところも大きいのかもしれませんね。

正月飾りは、どんど焼きで始末しなければならないところですが、今年のこのシンプルな感じが気に入って、家の外から中に場所を変え、まだ楽しんでいます。

皆様におかれましては今年はどのような年にしたいと思われますか?

昔は、冒険は日常の外でするもの(旅だったり、いつもとは違うことをする)と思っておりましたが、最近は日常の中にこそ冒険があるのだな、と思うようになりました。つつがない日常を過ごしつつ、その日常を冒険心とともに過ごしていきたいものです。

定点観測することによる発見や、小さな積み重ねを大事にしたい2019年です。

2018.12.14

TRAVELLING WITH TEA展

TRAVELLING WITH TEA展

英陶芸家、スティーブ・ハリソンのTRAVELLING WITH TEA展は2018年12月3日のプレビューを皮切りに、12月8日まで、ロンドン Albemarle通りにあるグローブトロッター本店にて開催されました。

今回の展示は、スティーブ30年にわたる陶芸家人生の集大成とも言って良いほどの充実した展示になりました。

夕方6時からのプレビューにはサックスの生演奏が入り、 ロンドンのPostcardteasでスペシャルに用意されたスパークリングティーが振舞われ、多くのコレクターやお客様で賑わいました。プレビュー招待客はそれぞれパスポートをもらい、そこに参加スタンプをもらうといった凝りようです。

テーマは、「お茶と旅する」なのですが、この中での「旅」とは、二つの意味を表しています。まずは、具体的に茶器と「旅する」こと、そしてそれについて深く考えを巡らした時の流れそのものを,抽象的に「旅」と捉えることでした。

「お茶」の初めての体験、その昔学校の先生が作ったマグを購入し、使った後に感じた違和感から始まったスティーブの「お茶をいれる器」を自作することへのオブセッション。これがゆくゆく、「自分が満足できる機能的で美しい器とは何か?」次は、自分の器を「いかに安全に外へ持ち出せるようにして行くか?」、そして「それはいかなる形で持ち出すか?」とスティーブに課題を与えて行くことになったのでした。

課題を考えて行く中で、スティーブが出会った美しいもの達の展示もありました。それは例えば友人の持っていた古い錫のボックスであったり、日本の古い竹で編んだ茶籠、戦時中のイギリスのピクニックセットなど、それぞれがスティーブの制作にインスピレーションを与えたことがわかります。

2009-2011年制作のStill Life,そして2015年にロンドンのギャラリーで開催されたCUP BOARD展を経て,2018年、スティーブの「茶(器)と旅する」ことは、限定15セットでグローブトロッターでスペシャルオーダーしたボックスと茶器のセットが制作されたことでその終着点に到達したのでした。

このセットには、漆が施された特注ボックスに個別のエドワーディアンのキーがつけられ、中には2つのマグ、ティーポット、茶こしセット、ティーカディー、ティータオル、漆の茶さじ、そしてトレイが収められています。

イギリスには、every pot has its coverということわざがあります。本来は、人間関係の比喩として使います。

今回、この限定15セットのボックスにそれぞれのティーセットが収められている、という(本来の)意味で使われるのに、これほどピッタリのことわざはありません!

「用の美」を追求し、30年の旅を経てこの素晴らしい展示を、ある種の終着点として私たちに示してくれたスティーブ・ハリソン。今後は、この終着点からまたどんなテーマを見つけ、どんなTravelling with teaをして行くのでしょう?今後の彼の活動も楽しみです。

2018.07.07

「型」に「血」を入れて「形」にすること

「型」に「血」を入れて「形」にすること

夏前の最後の茶の稽古に行ってきました。

昨日は戻り梅雨のような一日。雨の音を聴きながら稽古をしました。

最後の茶の稽古は広間での濃茶、そして私がそのまま広間で点てさせていただいた薄茶。

本来ならば環境が変わり(通常は薄茶の稽古は立礼式)気持ちがバタつくはずが、なぜか昨日は落ち着いて点てることが出来、 自分でも不思議だな、と思ったのですが。。。

ああ、先生のおっしゃっていたのは、これか、としみじみ納得したのです。

我が茶の師匠は、「この茶室を一歩出たら、すぐに稽古のことは忘れなさい。家で練習などはしないように」と仰います。

私のような単純な者は「おお、これは助かった」などど思っていただけなのですが、この言葉にはもっと深い意味があったのです。

まずは「家で自流で練習すると、よくない間違った癖がつく」ということ。
そして「頭で覚えず、身体で覚えることが一番大事」ということ。

更にその根底にある本当の意味は、「型」を身体で覚え、そこに暖かい「血」を注ぎ込むことによって(比喩ですが)それがようやく、 その人自身の「形」になっていく、ということでした。

個人の個性などというものは、まず「型」を体得し、そこに個人の「血」を入れてようやっと見えてくるもの、ということなんですね。

私が茶の稽古を再開してから何年か経ちましたが、やっとそのとば口に立てたような気がした昨日の稽古でした。

2018.04.03

桜の季節に

桜の季節に

季節はあっという間に桜も葉桜に、これからは新緑の頃を迎えようとしています。
雪が降った春分の日から1週間後には、桜が満開。
2018年は、いろいろな変化が訪れるという知らせなのでしょうか。
3月30日、皇居の乾門を通り抜け、千鳥ヶ淵までのんびり午後の散歩を楽しみました。
桜も満開、すでに少し散り始めていて、快晴のもとそれはそれは美しい光景でした。
日本に生まれてよかった、なんて思うのもこの季節。
与謝蕪村の「春の海 ひねもすのたり のたりかな」の心境です。
桜の季節を詠んでいる名歌は他にも
「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」 紀友則
「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」 伊勢物語 在原業平在原業平
「願わくば 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃」西行
などなどがありますね。
どの歌も心に沁み入る桜の季節です。

2018.03.22

贅沢な時間ー香り

贅沢な時間ー香り

春分の日に雪。
そして今日はまた例年の気候に戻り、となかなか気候の安定しない今日この頃。
そんな時こそ気持ちを整えたいもの。
ゆっくり自分のための時間を楽しむお供は香り。
上質の香りは、とても繊細です。香道では、香りを『聴く』と言いますが
まさに上質の香りは気をつけないと儚く去ってしまうのです。
ですからゆっくり集中して香りを聞く時間を楽しみたいものですね。

例えば、寝室の薄暗くてひんやりした場所で就寝前に楽しむ香り、
またはお洋服のタグや裾にまとって自分の動きで楽しむ香り、
バスルームのタイルやバスタブで楽しむ香り
などなど楽しみ方は様々です。
気持ちがすーっとまとまっていくような感じがしてきます。

ギャラリー久我で取り扱っているKURUMI AROMATIQUEの香りは、創香家である中山久留美が
完全オーガニック素材を使用し、1本1本手作りしています。
ボトルもインクボトルを想起させるような、吹きガラス、キャップも胡桃の素材を使用した手作り品。

3/20発売の雑誌&Premiumで(p69)ご紹介いただいた香りは二種類。
「雫」は、葉に当たった雨の粒が雫となって滴り落ちていくイメージから作られた香りで、
ピリッとした香りが少し緊張感を運んできてくれます。
そして「杜」は、久留美さんの伊勢神宮へ出かけて行った際の体験がそのまま香りの世界に凝縮されています。
雨が上がったばかりの伊勢神宮の下宮。湿度を含んだ参道に漂うヒノキの香り。
厳かな気持ちになりながら、この先に何かが待っているようなワクワクした静かな期待に満ちた思いが
香りの世界に落とし込まれています。
Kurumi Aromatiqueではその他にも
空気のように香る爽やかな香り(空)、
マティスの描く女性のイメージの香り(遊)、
京都のモダンさをフランス風なイメージの解釈で香りに落とし込んだもの(京)、
桜の時期から鮮やかな新緑の世界に変わる香り(新芽)
満開の沙羅双樹の花と磨き込まれた境内に掲げられた揮毫からきたイメージの香り(沙羅)
にじり口から小間に入った時、障子を通して畳に差し込まれたベージュの光、明暗の対比の香り(茶室)
記憶と人が結びつけられる香り、祈りの香り(想)
がございますので、その時々で香りを使い分けるのも楽しいですね。
すぐに消えてしまうという意味で、究極の贅沢とも言える香りの世界、是非それだけを楽しむ時間を
作りたいものです。