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2020.01.31
[Event report] スティーブ・ハリソンのうつわと楽しむチーズの会 イタリア編



2020.01.24
2020年、今年もよろしくお願いいたします
1月も終わろうとしているのに、年初のご挨拶が遅れてしまいました。
失礼いたしました。
今年も皆様、お健やかに、そしてよろしくお願いいたします。
1月のメインイベントは何と言っても先週末のお茶の初釜でした。なんとみぞれ交じりの冷たい雨の日になってしまったものの、無事に終了。
茶室は清々しいお正月仕様で、気分はピリッと引き締まります。
よく考えたら初釜も4回目。途中、先生のご都合でなかった年もありましたから、お茶の稽古も6年目を迎えようとしているんですね。
こうして、毎年同じイベントで新しい年を始められる幸せを感じています。
今年は東京オリンピックは開催されるし、2020年代が始まったり、と非日常感が満載。
しかし、だからこそ今年の私の目標は、環境を整えて、その結果としてやりたいことにスーッとチャレンジできるようにすること。
無理な頑張りは横に置いて、「平常心のままで、無理なくものごと進めていって、気がついたら到達していた」を目標にしました。
その目標のために一番大切なのは、「環境を整えること」。
自分の心身含め、周りの環境を整えよう!をポリシーに進んでいきたいと思っています。

2019.12.04
The Loft Pots 展 Preview
先のinformationでもお知らせした通り、11月28日のスティーブ・ハリソン個展The Loft Pots展プレビューに参加してまいりました。
プレビューは陽も落ちた18時スタート、まずは6時半の映画上映までそれぞれスモールトークを楽しみます。今回は,Nigel Slaterさんから、ロンドンセントラルで素敵なティーショップPOSTCARD TEASを経営されているTimさんをご紹介いただきました。
そうこうしているうちに階下へ移動し、まずショートフィルム、ORANGE PEELの第一回上映がスタート。
このORANGE PEELは、スティーブと長い付き合いのある写真家、Richard Cannon氏がウェールズの窯まで出向いて、その作陶の情景をフィルムにしたもの。私も8年前ほどに、1泊2日で伺ったことのある懐かしいウェールズの窯の光景が出て来て、改めてその進化具合いに感じ入りました。
このフィルムの中で一番ある意味ショッキングだったのは、出来上がった作品をスティーブが精査して、あるものはそのまま割ってしまうシーンだったのではないでしょうか。
塩釉作品の歩留まりは決して高くないのに、そこからまた自分のフィルターをかけて落としてしまう作品があるから、結果的に自分が認める作品数は決して多くないのだ、というスティーブの常日頃の言葉をまさに体現しているシーンだったと思います。
タイトルのORANGE PEELは、塩釉が、オレンジの皮みたいに見えること、そしてfiring(焼き)の色がオレンジ色にも見えるというダブルミーニングなのではないかなと想像します。
フィルムの後にはQ&Aコーナーもあって、熱心な陶芸家たちからの質問にスティーブが答えていました。

フィルム上映後は今度は同じ建物の上階に上がって、いよいよスティーブが、カードボードで作成したウェールズの窯を模したものの扉を開きます。
そこには2000-2019年までの、スティーブのアーカイブポットが整然と並べられ、来客は一斉にスマホを片手に画像撮影スタート!

プレビューでは、Fantasy Kilnをお披露目した後、ルーフトップでシャンパンが振舞われました。そこには椅子やテーブルなども用意されているので、ここでようやくゆっくり色々な方達とお話しすることもできました。
その中の一人が、Covent Gardenで素敵な文房具店Choosing Keepingを経営されているJulia。彼女の店では贅沢なことに什器にスティーブのテーブルやペンホルダーを使っています。スティーブと楽しい企画も進めているようで、今後が楽しみです。
今回の展覧会では図録が作成されました。
この図録の作りですが、もともと本が高価で,購入した人だけが読めた時代へのオマージュとして、全てのページが袋とじになっています。いちいちペーパーナイフで切り離さなければ作品写真も見られない、ということ。モダンでありながら、クラシックでもあるスティーブらしさ全開です。


ORANGE PEEL by Richard Cannon
楽しい夜は更けていき、10時をすぎてもなかなかみんな席をたとうとしないのが印象的でした。
スティーブの個展は始まったばかり。このまま年を超え、1月25日まで開催です。この時期にロンドン訪問の予定のある方は是非Blue Mountain Schoolをのぞいて見てくださいね。
2019.10.15
TIMELESSな美について想いを馳せる
季節は長い夏を経て、ようやく秋めいてきたと思ったら、10月に入ってから大型台風の襲来で迎えた3連休でした。
台風の爪跡もまだそこかしこに見られます。皆様の穏やかな暮らしが1日でも早く取り戻せますようにと祈らずにはいられません。
前回のブログはまだ夏真っ盛りの記憶を綴りましたが、今はもうすっかり秋。朝晩は20度を割り込むようになりました。
9月の最終日、30日に友人の田中敏恵さんが企画された『TIMELESS時を超える美と言葉』というイベントに参加いたしました。このイベントは、東京、西新宿のパークハイアットホテル25周年を機に企画され、以前からパークハイアットをこよなく愛していらっしゃる作家の吉田修一さんが、ホテルに滞在されながら上梓された『アンジュと頭獅王』発売を記念し、開催されたもの。
田中敏恵さんと吉田修一さんの物語誕生秘話に関する対談、その後は、文楽協会技芸員の太夫・竹本識太夫氏と三味線・鵜澤清志郎氏による浄瑠璃『安寿とつし王』の一節を義太夫節で拝聴するという、なかなかの内容です。
ホテルのバンケットルームのような比較的小さなスペースで聴く義太夫節と三味線、圧巻の響きでした。まるで自分もその時代にワープしてしまったかのような心持ちになります。
今回のイベント、テーマが『TIMELESS』ということもあり、私にとってのタイムレスな美とは何だろう、と再考する良い機会になったように思いました。
対談の中で、吉田修一さんが定義づけた「美とはためらいのないこと」には賛同しつつ、美が歴史の中で常に「ためらいがなかったのか?」と言われれば、わかりません。その美のために、時には死に至るためらいのなさも過去にはあったのかもしれません。
例えば宗教みたいなある種の規律や思考を「美」と定義づけることによって「美とはためらいのないこと」としてしまうと、過去においては、十字軍の遠征、キリスト教の新旧の信者の争い、現代においてもイスラム教との戦いなども「美のためにためらわず」と、容易に説明されてしまう危うさをはらんでいる気もしてきます。
かように「TIMELESSな美」の定義づけは難しいな、と思うのです。
しかし、一方で1000年も昔の『源氏物語』の中で、恋しい人へ香を薫きしめた手紙を、花とともに送る、こういう行為を、1000年後に生きる私たちも「美しい」と感じます。日本人の感性は1000年も変わっていない、ということなのでしょうか?
1000年前の感性を、現代に生きる私たちがそのまま受け取ることができる、これぞまさしく『TIMELESSな美』の一つなのかもしれません。
*
それと同時に思い出したのが、昨年金沢の陶芸家と、江戸時代に長崎の出島で創業したドイツの商社、その4代目社長との会話です。私は通訳として入ったのですが、その時の会話がとても興味深かったので、メモしておきました。
テーマは、美という字は大きな羊と書くがそれは何を意味するのか?
陶芸家の方から投げかけられた質問でした。ドイツ人に向かって「あなたはどう思うのか?」と。
色々な会話が飛び交ったのですが、最終的にお二人はこのような結論に至りました。
美の定義とは
・みずみずしいことーそれはfreshではなくもっと深い意味を含む
・決して色褪せない普遍的なもの
・時の一番の権力者に受け入れられるもの
これらの要素を含む大きな羊は、群れの中にいてもその大きさゆえにすぐ誰にでもわかる。
それゆえ大きな羊が美という字になったのであろう。
今こうして書き起こして見ると、大きな羊、と書く「美」はなにやら権力と結びついた、どちらかというと危うさをはらんだ方向に近い気がしてきます。
こうなってくると観念的な「美」と感性的な「美」はオーバーラップさせない方が良いのかな、という気もしてきますね。
時代と時間を超えた美しさ、TIMELESSな美、その時々で考えていきたいテーマです。
(画像は発掘品の水牛の赤ちゃんー時代がたっても動物の赤ちゃんの可愛らしさは普遍に感じられます。これもTIMELESSな美の一面なのかもしれません)
2019.08.12
旅の効用2-アルバニア旅行
日本人の99、5%が生涯行くことがないと言われているアルバニアへ行って来ました。
自然は手付かず、そしてギリシャ、ローマ時代からオスマン帝国時代の遺跡など、見所がたくさんありすぎるアルバニア。
アドリア海、イオニア海に面していて、お隣はギリシャ、海の対岸はイタリアです。
アルバニアは、第二次大戦後は、社会主義、そして独裁主義へと、負の歴史が1991年まで続いており、国は鎖国状態でした。
昨今では、ようやく観光客も国の人口を上回る勢いで増えて来ました。(アルバニア人口は280万、昨年の観光客は700万)
それでもロンドンからといえども、なかなか行こうという感じの国でもありません。
しかし、私は、今年は旅をしたくて、しかも行ったことのないところへ行きたいと思っていました。
アルバニアは、イタリアに近く、「ヨーロッパ最後の秘境」と呼ばれていることもあり、旅先に決めたのでした。(最悪、イタリア語が通じるのではないかという期待を込めて)
流石に自分達だけでうろうろすることは難しそうだなあーと思い(なんと言ってもアルバニアの電車など公共乗物が全くあてにならないことが大きな理由)プライヴェートのツアーを予約することに。
首都のティラナからローマ時代の劇場遺跡が残るデュラス、そして「千の窓」の世界遺産の町、ベラト、お城からの眺めが絶景のジロカストラ、青い泉がこんこんと湧き出るブルーアイ、ローマ時代の遺跡が広い国立公園内に点在するやはり世界遺産のブトリント、海辺の町サランダ、ローマ初代皇帝、アウグストゥスが学問を学んだアポロニア、オールドバザールが有名なクルヤを見学し、最後に首都ティラナに戻りました。

「千の窓」と呼ばれる世界遺産の町、ベラト

お城からの眺めが絶景
ジロカストラ

50メートルの深さからこんこんと湧き出る美しいブルーの泉、ブルーアイ

ローマ時代の遺跡が国立公園内に残る世界遺産、ブトリント

海辺のリゾート、サランダ

ローマ帝国初代皇帝、アウグストウスが学んだアポロニア
首都には自分達で追加で2泊し、町の朝、昼、夜の表情を見ることもできました。
ついこの間まで、独裁者が組織したシグリミと呼ばれる秘密警察によって国民が監視されていた国、アルバニアの首都・ティラナ。
独裁者の勝手な思い込み(アルバニアは核攻撃を受けるに違いないという)により、国民がバンカーと呼ばれる地下施設を作ることを強制されました。そのためアルバニアには使い道のないバンカーがなんと16万個もあります。
そのバンカーのうち、内務省と地下で通じているバンカーが博物館になっています。地下部屋はなんと24個もあり、そこで社会主義時代の治安維持、政治犯の扱い、17種類もの拷問の方法などが、当時の手紙や道具とともに展示されているわけです。当時の記録を読んでいると、ひたひたと恐怖に囚われます。

いかにも社会主義モザイク画のある国立歴史博物館

バンカー(トーチカ)

ミュージアムになったバンカー

ジロカストラの城内にある社会主義を讃える像
バンクアート内の部屋を見ているうちに、気持ちがだんだん暗くなりました。やっと見終えて、外へ出ると、夏の遅い夕暮れを楽しむアルバニアの人々がレストランやカフェで、友人たちとビールやコーヒーを飲みながらおしゃべりに興じています。
とても気持ちが救われました。
大変な時代を乗り越えてきたアルバニアの人々がこれからもずっとずっとこのような夏の楽しい時間を過ごせますように、と願わずにはいられません。
夜9時ごろ、スカンデルベルグ広場を散歩しました。
広場全体がライトアップされ、噴水が吹き上げ、その中を子供達が楽しそうに走り回ったり、自転車で駆け抜けたりしています。

ティラナ、ライトアップされた町
町はとても平和。夜歩いていても安全です。
一方、バルカン半島の歴史に思いを巡らすと、なんと複雑なことでしょう。
現在は、スロヴェニア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、アルバニア、コソボ、セルビア、モンテネグロそしてマケドニア。これらの国々がバルカン半島にひしめいています。
それぞれの歴史と異なる民族。
世界は狭くなったような、いや、やはり広い。
実際に行って見なければ体感し得ないこともたくさんあります。
アルバニアの英雄、スカンデルベルグのことを知り、そしてインド系アルバニア人であったマザー・テレサに思いを馳せ、そして私たちのガイドさんが最後に私たちに伝えてくれたメッセージ、「アルバニアの正しい情報をあなたからお友達に伝えてください」を心に刻みました。
アルバニアの自然や歴史の厚さに感動し、また同時に平和の尊さを強烈に感じた旅となりました。

スカンデルベルグ広場
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