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2024.04.13

連載 Artbook「STEVE HARRISON」出版への歩み Chapter 5 壁

連載 Artbook「STEVE HARRISON」出版への歩み Chapter 5 壁

Artbook「STEVE HARRISON」出版への歩み


Chapter 5 壁


ギャラリー久我でのスティーブの作品紹介は、順調に進み、作品への理解者も徐々に増えてきた。展示販売のご案内をすると駆けつけてくださるありがたい方々もいらっしゃる。

スティーブ自身も、意欲的なコンセプトのある作品を作り、自分の工房ではないロンドンの街中のギャラリーで、初めて作品展を開催した。(2015年Cupboard展)

私の、「スティーブの本を作りたい」という気持ちは変わりはなかったが、一体どのようにしたら本ができるものなのかがさっぱりわからない。

何と言っても私自身、本を制作したことなどないのだ。

本を作るとっかかりも得られない、という焦りは喉に刺さって取れない魚の小骨のようだ。時に、痛む。

とはいえ、帰国以来、私も私なりには努力はしていた。知り合いに声をかけ、出版会社で仕事をしている編集者を紹介してくれと頼んだり、ギャラリーに来るお客様にも「スティーブの本を作りたいのだ」と伝えたりもしてみた。

紹介してもらった編集者に見てもらうための企画書のようなものを作ったりもしてみた。

しかし、何をどうやっても実を結ばない。私自身はスティーブの力と将来性を確信しているのだが、それがうまく伝わらない。

悶々としながらも、打開策も解決策も思いつきはしなかった。


その頃、一人のスタイリストから連絡をもらい雑誌用にスティーブの作品を貸出することになった。メジャーな雑誌に掲載されるので、少し世界が広がるかもしれない、と密かに期待をかけた。そのスタイリストさんには、それ以降も何度か作品をお貸出することとなる。しかし、結果としては本作りのきっかけとはならなかった。


こうして数年が経っていくと、「本作り」は決して忘れたわけではないのだが、スティーブ作品の買付けやその販売も忙しくなり、しばらくそのプランは棚上げせざるを得なくなってしまった。


この頃、スティーブの買い付けは年間2−3度行っていた。ロンドンでステイーブに会うたび、本作りだけが残された宿題のようなものだ、とひしひしと感じることとなる。

スティーブが本作りのことを一才聞かないのも、それはそれで私にはプレッシャーとなった。何といっても本を作りたいから、とわざわざインタビューの時間を何時間も取ってもらったのだ。

高い高い壁を感じ、どうしたらその壁を登れるのか、もしくは壁に穴を開けられるのかがわからないまま時が過ぎていった。



●CUPBOARD展のスティーブ




●CUPBOARD展 54 THE GALLERYにて



●CUPBOARD展ポスター