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2024.03.08
連載 Artbook「STEVE HARRISON」出版への歩み Chapter 2 胸中成竹
Chapter 2 胸中成竹
「胸中成竹」という言葉がある。11世紀後半、北宋の時代を生きた政治家であり文人でもあった蘇東坡の言葉だ。竹の絵を描く時はまず胸中に生長した竹を思い浮かべ、一気に筆を走らせよ、すなわちものごとを始める際にはあらかじめ見通しをつけて準備を整えておくべしという意味である。
2012年2月の帰国後は私のとっての「胸中成竹」時代、つまり本を出すという目標に向かう準備期間となった。
まずはスティーブの工房で折に触れ買い集めてきた作品をどこかで展示販売し、彼の作品とそれを紹介する私自身をプロモートする必要があったが、ありがたいことに長年の友人である朝稲理子さんが相談に乗ってくれた。
彼女はVeerleという洋服ブランドのデザイナーで、ちょうど私の帰国と同じタイミングで中目黒のオフィスを引き払い、西荻窪の古民家をオフィス兼店舗Tres Tre3として借りたばかりで、そこでの柿落としのイベントとしてスティーブ作品を販売したらどうか、と提案してくれたのだ。
イベント開催も販売も私には経験はないが、とにかく2012年末にTres Tre 3でスティーブ作品を紹介しようと話がまとまった。
5月、スティーブが来日。
我が家に数泊お泊まりいただきながらその間金継ぎの赤平先生のご自宅へ寄らせていただいたり、日本民芸館へ一緒に行ったりしたのだが、そのついでに西荻窪のイベント予定の店舗を見に行ったりもした。場所はスティーブもとても気に入ってくれたので一安心である。
●金継ぎ師である赤平一枝先生宅を訪れ、金継ぎプロセスの教えを受けるスティーブ
●展示会場となる西荻窪Tres Tre 3を外から覗き込むスティーブ
●展示会場となる場所を眺めるスティーブ
そこからは12月の展示開催に向けてありとあらゆる雑事や作業を片付けていくこととなった。
まず、展示販売のテーマを、Mad Potter’s Tea Party in the secret gardenと決めた。スティーブ作品だけではなく、私がとても好きな美術家・勝本みつるさんやキャンドルアーティストのマギエラさんにもお声がけし、協力していただけることとなった。
12月の展示の宣伝は大学のFacebookで知り合いとなった同窓の大先輩に(お目にかかったこともない)厚かましくもお願いし、雑誌Aeraに小さく広告を載せていただいたりもした。
展示販売のためのDMも初めて作成することとなったが,写真撮影は本でも大変お世話になっているTomoko Osadaさんにお願いした。(写真家であるTomoko Osadaさんとの出合いについては別章で詳しく述べたいと思う)
この時のDMに記載された文は下記の通り。
“秘密の庭で開かれるマッドポッターのティーパーティー“をテーマにイギリスの陶芸家スティーブ・ハリソンの展示会を開催いたします。
造形作家の勝本みつる氏とキャンドルアーティスト・マギエラ氏の参加により、不思議な空間が西荻窪のGallery Tres treに出現します。
この機会に是非、スティーブ・ハリソンの作品をご覧にお越しください。
●Mad Potter’s Tea Party のDM
Mad potter’s Tea Party in the secret garden展は2012年12/8 から12/16まで開催。開催直前には地震があったりしてヒヤヒヤものであったが、レセプションはありがたいことに大勢の人で賑わい、良いスタートが切れた。スティーブ作品も、勝本作品、マギエラ作品ともに順調に売れていき、やはり良いものは理解されるものなのだなあ…としみじみ思った。私は展示中に会う人会う人に「最終的にはスティーブの本を作り出したいんです。」と話をして回った。
●展示開催初日 (外観)2012 12/8
●展示開催初日 (展示風景)2012 12
Mad Potter’s Tea party 展は、翌年2013年にも同じTres Tre 3で引き続き開催。
その際には、私がトークショーを開き、「スティーブ・ハリソン 人と作品」をテーマにスライドと共に皆様にスティーブとの関わりやどのような陶芸家なのかを説明した。
●トークショーの光景 2013.12
帰国後の2年に亘って、スティーブの展示を友人である理子さんの助けと、彼女のギャラリーをお借りしながら開催することができた。改めてここで感謝の念を伝えたいと思う。
*現在この場所はカフェとして営業中。 Café Tres Tre3 杉並区西荻窪2-6-10
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