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2020.07.06
歴史の裏側
最近、日曜の9時からの連続シリーズNHKスペシャル『戦国』を楽しみに見ています。
天下太平の徳川の世になるまで、おおよそ150年間は、戦国時代。
侍たちが戦っていた時代だったわけですが、この戦いは日本国内で行われていたものの、実はグローバルな戦いでもあったのですね。
当時、ヨーロッパの覇者であったスペインと、商業に特化した新興国・オランダが互いに武器を供与することによって日本の懐にがっつりと入り込んで戦いに間接的に参加していました。
日本の状況を本国に正確に報告していたのが、スペインは宣教師であり、オランダは商人であったわけです。
ですから、この時代の宣教師ってのは、キリスト教の布教とともに諜報活動の任務も担っていました。
最近になって、オランダでの古文書の研究が進むにつれ、日本の果たした役割が殊の外大きかったことなどもわかってきているそうです。
佐渡島をはじめとして、各地の銀山から採掘された銀の量が、ヨーロッパの植民地から取れるそれを上回る勢いであったこと、そしてヨーロッパの大砲に日本の銅が使用されていたことなど、かなり驚愕の事実が出てきています。
日本の銀は、銀貨になり、銅は大砲などの武器に使われました。
そして、徳川家が世を制した後、失業した侍たちが、そのスキルを見込まれてオランダ側に、傭兵として雇われて東南アジアに出稼ぎに出向くことに。
なんと日本は銀や銅だけでなく、人材の輸出もやっていたのか!
これは驚きです。
しかも、この後、グローバルになるかと思いきや、日本は1637年に起きた島原の乱をきっかけとして1639年から鎖国します。
これは、インドネシアやフィリピンのように、結局攻め込まれ、オランダに植民地化されてしまったまわりの国のことを考えるとよかったのかもしれません。
私たちは、日本史の授業で関ヶ原の戦いや大坂冬の陣、夏の陣を経て、徳川家康が豊臣家を滅亡し、完全なる勝利者となった、と習いました。
その勝利に大きく寄与したのが、こうしたヨーロッパからの武器の供与だったこと、その後、傭兵化した侍たちがいたことなどは全く習いませんでした。
勢力を握った後、徳川家はオランダ商人と取引をしつつ、日本の中での地位を確固たるものとしていったわけですね。
このような事実は長い間、歴史の裏側にひっそり沈んでいました。
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これまたNHKの番組なのですが、子供の時に大好きで見ていたのが、世界各地の失われた古代文明遺跡を巡る壮大な番組『未来への遺産』(1973-1974)です。
この番組は強く脳裏に焼き付いています。
それが証拠に、いまだに、マチュピチュ、シリアのパルミュラ神殿(悲しいことに、ISによって破壊)、インダス文明、オルメカ文明などに強烈に憧れ続けています。
今では失われてしまった文明に強く心惹かれます。
ある骨董屋さんの書いた本の中の話の一つ。
それは、主人公である骨董業者が、インドネシアのさる島に買い付けに行った際の出来事。
インドネシア、サンヘギ島を中心とした諸島はパウダーアイランドと呼ばれています。
このパウダーアイランドに属する小さな火山島、ブキデ島がこの話の中心地。ブキデ島と言っても、ジャカルタからの交通の便は途方もなく悪く、特産物もないのでインドネシア人達ですら、この島の存在を知りません。
ところが、このブキデ島はオランダ植民地時代には近くの島々で栽培された香料の集積地だったのです。
当時はオランダ風の家も立ち並び、島は栄えていたのだと言います。
しかし、インドネシア独立後は、島の香料ビジネスも縮小し、ブキデ島は、また香料栽培以前の静かな生活に戻ったのでした。
主人公の骨董屋は、この島にオランダ植民地時代の宝物が残っているらしいといの噂を聞きつけ、苦労してこの島にたどり着き、島の島主からオランダ東インド株式会社時代のカトラリーや、VOCマーク入りの伊万里などを買い付けることに成功します。
その際、島主から見せられた宝物の中に、大きな水晶の六面体の塊が混じっていました。しかもその根本に象形文字のようなものが刻まれています。
主人公は、ブキデの地層には、このような水晶は産出しないはずだと思い、島主に出どころを聞いてみました。
島主も「古くから伝わったもので、どこから来たかはわかりません」と言います。
言い値が高かったのと、同伴したインドネシア人がケチをつけたため、主人公はこの水晶は買わずに島を後にしました。
ジャカルタに戻って、街の骨董屋とよもやま話をした際、その水晶の話をしたところ、主人公は「それは大変なものを買い逃したかもしれない」と言われ、衝撃を受けます。
ブキデには、紀元前に航海術に長けた南インドから人々が移住して来た、つまりインダス文明との繋がりがあるのではないか、と言うのです。
しかもインダス川下流域には、ドーラビーラと言う古代都市があり、文字も持っていたのだ、と。
ブキデの人々の風貌(エジプト壁画のハム族のような雰囲気、赤毛、彫りの深い顔立ち)はドーラビーラの人たちとの共通項がある、と。
主人公は、今更ながらに地団駄を踏みますが、仕方ありません。
ブキデは簡単に再訪できるような場所ではないのです。
ところが、ジャカルタの骨董屋が後日、ブキデへ出かけていき、交渉の末この古代文字が刻まれた水晶を手に入れたことがわかりました。
主人公が、その水晶を再度、見せてくれ、と頼んでもその街の骨董屋は見せてくれません。
それどころか日に日に寡黙になり、まるでインダス文明に取り込まれてしまったかのようです。
主人公はこの話をこう締めくくります。
こんな風に歴史の扉が開こうとする直前、再びしまってしまうような出来事が骨董世界では時々あることだ、不思議な経験をした、と。
開きかかった歴史の扉が、再びしまり、後には沈黙が残されたのです。
歴史とは浪漫ですね。
画像)古代ガラス、翡翠飾り玉、蜻蛉玉
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