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2022.11.25
[Event Report] Emily Jo Gibbsイベント
ただ、大変残念なことにエミリーが連日のハードスケジュールで(丹後の方まで職人訪問したりなど)体調を崩してしまったため、 イベントそのものはエミリーなしで開催することとなりました。
エミリー不在もイベント当日朝にお知らせする形となってしまい(本人もギリギリまでイベント参加の道を模索していたため)皆様にはご迷惑をお掛けしてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。
ただエミリーは感染症ではなかったので,ホッとしました。
エミリーは、このイベントのために素材や作品などを用意してきてくれていたので、最終的にはとても見応えのあるイベントを開催でき、ご来廊の皆さまにもお喜びいただけたご様子なので、こちらも本当に安堵いたしました。
このブログでは、イベント翌日、体調を少し回復したエミリーの画像も載せながら、その素晴らしい世界観に触れたいと思います。
エミリーの作品については、1993-2006年までのバッグを制作していた第一期、そして2005ー現在までのシルクオーガンジーを使用したポートレート制作の第二期と分けて考えられます。
第一期は、それこそファッション界で、ラグジュアリーハンドメイドのハンドバッグデザイナーとして主にアメリカ、日本市場でも活躍していました。
しかし、その後主にお子さんをご出産されたことで私生活でのバランスも変わったことをきっかけに、いつも追い立てられるようであったファッション界からは身を引きます。
その後、生まれたのが自然を観察することから生まれたネイチャー・テーブルと呼ばれる一群の平面作品でした。
そしてそれが、同じ手法で人物のポートレート(オーダーを主とする)、そしてValue of Making (作ることの価値)シリーズ、職人とその道具シリーズに発展していったのです。
今回、エミリーの平面作品をじっくり見る機会に恵まれましたが、なんといってもその繊細なモチーフと色合わせ、そして丁寧な仕事が美しく、心に残りました。
エミリーの作品は素材選びから始まっています。
彼女は、色はそれほど多色使いはしませんが、素材を重ねることによって、作品に奥行きと深みを持たせています。
地の素材によく使われているのがtwil linen(麻)ですが、皆さん、これほどしっかりと目が詰まった麻素材は日本では見つける言葉できないとおっしゃっていました。
そこに、シルクオーガンジーのパーツを切って、ステッチで縫っていき、そこにまたフィルター的にシルクオーガンジーをかけます。
ひきつれなどは全くなく、それは枠を使わずに作業をすることでふんわりした感じに制作できるのだそうです。
ステッチの糸も刺繍糸ではなく、綿ミシン糸(coatsという会社のものがお気に入りだそうです)を使い、繊細に仕上げています。
シルクオーガンジーの色ヴァリエーションの豊富さも素晴らしく、全体的には淡い色調ですが、それを重ねることにより濃淡を出し、作品にリズム感を与えています。
これらの素材も、日本で手に入れるのは難しいのだそうですが、エミリー曰く、豊富な素材は韓国で見つけることができるのだそうです。
エミリーは、今はバッグ作りはメインにはしておりませんが、拙ギャラリーのお客さまのためのバッグは受注でオーダーを受けてくれます。
今回、バッグもアーカイブから、数点持ってきてくれたのですがそれがまた大変素晴らしい作品ばかりでした。
エミリーが自分のUSP(ユニークセールスポイント)は、メタルワークができるから全てを自分で作ることができる点なのよ、と言っていました。
どのような意味かというと、エミリーは元々のバックグラウンドが刺繍ではなく(刺繍は、エミリーがお母様から習った程度だそう) 大学ではウッドメタルや、プラスティックを学び、短期間ですが靴作りや革細工を学んだそうです。
しかし、そのような多種にわたる素材を扱うことができるため、バッグ製作においては全ての必要なパーツを、自作することができ、これが自分の強みなのだということでした。
要するに、パーツまで自作できるということはコピーされない、ということにつながるのです。
しかもエミリーが学んだのは、ジュエリーが作れるようになるくらいの繊細なメタルワーク。
(ジュエリーも1、2点作ってみたことはあるが、not for me(自分にあってない)だったそうです)
なので、繊細なハンドバッグのフレームやクラスプにはピッタリだったというわけです。
エミリーのバッグにおけるもう一つの素晴らしいポイントは、必ず良い素材を使うということです。
例えば、今は手に入れることが難しいインドシルク素材、またパーツに関しては、繊細なフレームがホールマーク入りのシルバーだったり、良い色味の真鍮だったりすることで、また作品にグッと厚みを与えています。
まず何よりも高級感があります。
パッと見ただけではとてもシンプルに見えるのですが、それがシンプルに見えるための見えない努力が施されている作品です。
また刺繍に関していえばぎっちり刺繍しているわけでもなく、良い意味での「抜け感」があるので、見ているこちらもリラックスすることができます。
刺繍の作品は、ものによっては見ているこちらが行き詰まってしまうくらいの高密度のものも多いので、どれだけ「抜け感」を作るかは大切なポイントのような気がします。
エミリー作品は、手数は少なく色数も限定され、シンプルでありながらも、上質な素材を使い、真の贅沢はまさにここにあり、を体現している作品ばかりです。
今回は、エミリー自身によるデモンストレーションも予定しておりましたが、次回もし叶うのであればワークショップやトークショーなども企画したいなとしみじみ思いました。
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