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ブログ

2017.08.16

デレク・ジャーマンの家

デレク・ジャーマンの家

イギリスの砂漠、地の果てと呼ばれる場所、ダンジェネス。
ここには原子力発電所があり、危険区域と書かれた看板もあります。
そんな場所に、イギリスの思想家、映画監督、舞台デザイナー、園芸家でもあるデレク・ジャーマンが移り住んできたのは、自身のエイズ感染が発覚した1986年のこと。
それから7年後に彼は亡くなります。
しかし、亡くなるまでの8年間、休むことなく手入れされた庭には今でも彼の作品が残ります。

家の外壁には、16世紀の詩人、ジョン・ダンの詩が装飾されています。

 日の出

 ひたすらに務めて老いし 日の翁
 いかなれば かくやする
 窓に入り 帳をあけて吾らを訪なう
 汝の巡る時に従い 恋する時の終われとや
 賢しらに言あげて 学舎に
 遅れし子らと手を厭う弟子らを叱り
 犬飼いに王の出を告げ
 地の蟻を刈り入れに呼ぶ
 折り節も季節も刻も日も月も
 すべては時の切れ端 愛を知らず…. 
 汝と吾らがかくは契れば
 汝の幸は半ばにてやむ 哀れやな
 汝は老いし いまははや憩いの時ぞ
 世を温む汝の務めは すでにして果たし終わりぬ
 ここに来て吾らに輝け されば汝はあまねく在ます
 この褥 汝巡る軸 かの壁ぞ汝の照らす空

ここダンジェネス、そして今では主人のいなくなった家には不思議な、乾いた寂しさがあります。
時は移ろい、そして人は来ては去り、それでも景色だけは変わることなく訪れた人々を迎えてくれるー諦念の中にほの見える希望を感じさせてくれる家でした。