menu

ブログ

2026.04.13

[Event Report] 芳茶遠播with Steve Harrison -壺中天

[Event Report] 芳茶遠播with Steve Harrison -壺中天

「壺中天あり(こちゅうてんあり)」という言葉は、中国の古い書物に記された一つの逸話に由来します。
後漢の人物・費長房(ひちょうぼう)にまつわる故事です。

ある日、費長房は市場で薬を売る一人の老人を見かけます。
その老人は、店を閉じると腰に下げていた壺の中へすっと身を入れ、姿を消してしまうのです。不思議に思った費長房が老人に導かれて壺の中へ入ると、そこには外の世界とはまったく異なる広々とした天地が広がっていました。

壺の中には、別の世界がある。
この物語から「壺中天」という言葉は、小さなものの中に広大な世界が宿っていることの象徴として語られるようになりました。

掌に収まるほどの小さな茶壺。
そこに湯を注ぎ、茶葉がゆっくりとひらいていく。

一壺の茶を囲むひとときのなかには、香りや味わい、会話や沈黙が重なり合い、思いのほか豊かな世界が立ち現れてきます。

今回の中国茶会では、講師の磯部優子先生がこの「壺中天」という言葉をテーマとして選んでくださいました。

そのテーマに沿って、室内のしつらえも整えてみました。
空間にはスティーブ・ハリソンの蓋付壺をいくつか配しましたが、静かな存在感をもつ壺たちが、茶の時間をそっと包み込むような景色をつくってくれたように思います。

先生の博識で軽やかな語りに導かれながら、参加された皆さまとともに、台湾茶農家さん達によって丁寧に作られた希少な茶を囲む静かな時間を味わうことができました。

小さな壺のなかにひらく世界。
一碗の茶を通して生まれる対話と沈黙。

皆さまと共有したそのひとときは、どこか哲学的な静けさをも感じさせる、美しい時間でもありました。

茶の香りが消え、席が静かにほどけたあとにも、
その余韻は、壺中の天のように、心のどこかに残っているように思います。

小さな器の中に、思いがけないほど豊かな世界がひらくこと。
そのことを、あらためて教えてくれる茶の時間でした。

壺の中の天は、きっと今も、どこか静かにひらき続けているのでしょう。

 

茶譜

哈娜谷山茶     二〇二五

鉄観音白茶     二〇二三

天池        二〇二五

正叢鉄観音  春超特岩韻    二〇二三

福壽梨山紅茶 二〇二五

 

お茶請け

香菇酥

干荔枝

干鳳梨

干山楂