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2022.12.16
[Event Report]レザービスポークの会 鮎藤革包堂xGallery Kuga
珍しい革をたくさん持ってきてくださってお話をしてくださったのは、神楽坂で鞄工房を営む鮎藤革包堂の鮎澤剛(あゆさわ つよし)さんです。
鮎澤さんとは、共通の友人からのご紹介で知り合いました。
数年前から、ご紹介したいと言われていたのですがなかなかタイミングが合わずお目にかかることが叶いませんでしたが、 今年の夏前に一度工房へ伺わせていただいた際、「これはギャラリーでイベントをお願いしたい!」とすぐにピン!ときましてお願い致しました。
鮎澤さんが鮎藤革包堂を始められたのは2006年。
和裁師としてお家で仕事をされていたお母様の周りに漂う、静かで凛とした空気感に惹かれていたことが原点だそうです。
鮎澤さんの場合は、興味の対象が布ではなく革だったわけです。
探究心旺盛な鮎澤さんは、革工房で5年間修行をして最終的にはカーフだけではなくオーストリッチやクロコダイル、爬虫類も扱えるようになりました。
その結果、平成24(2012)年度新宿ものづくりマイスター「技の名匠」認定 平成27(2015)年度優秀技能者(東京マイスター)知事賞受賞されました。
鮎澤さんが工房を開くにあたって、もう一つ忘れられない光景があるそうです。
それは森永製菓ハイソフトに入っていた小さなカード。
ウィンドウ越しの店内で職人が仕事をしていて、奥に靴が並んでいるヨーロッパのどこかの街の写真がカードになっていたそうですが、 そのカードが、鮎澤さんが職人になる気持ちをあたためるきっかけになったとのことでした。
なんだか目の前に光景が浮かび上がってくるようなエピソードですね。
レザービスポークの会では、鮎澤さんが持ってきてくださった革のお話、そして手縫の実演を皆様に見ていただきました。
「革」という漢字そのものが革の形から来ているのですね。
やぎ、羊、トカゲ、ワニ、オーストリッチ、さめ、ヘビなどなど原寸で見せていただきました。
日頃、動物の大きさなど考えたこともなかったのですが、こうして見せていただくと感慨が湧いてきます。
鮎澤さんの工房では、クロコダイルなどの特殊な革は、ワシントン条約で認められている革、きちんとナンバリングされて管理された革のみ扱っているそうです。
革の特質のお話もまた面白く、知らないことだらけでした。
例えば、ヘビとワニの脱皮の仕方の違いや、ヘビを養殖するには、プールに餌だけを置いておくとどこからか蛇がやってきて餌を食べた後はまた森に戻る(半養殖というそうです)などなど「へえーっ」と声を上げてしまうエピソードが満載でした。
また革という「いのち」をいただくことに関して、また別の見解を伺うことができたことも大変勉強になりました。
象の捕獲が問題になっていますが、保護している象が増えることによって別の問題が発生することもあるとのこと。
例えば、ジンバブエの国立公園で保護されている象が、次々に木を倒す。そうなるとその木に住んでいる絶滅危惧種の鳥の行き場がなくなってしまう。
なので、象の頭数制限をして、革にして売ってその売上を国立公園保護費に当てるというシステムになっているそうです。
そのようなバックグラウンドを聞くと、ただ「革」を使うな、動物は保護せよ、という意見は乱暴に聞こえてしまいますね。
「革」を使う私たち一人ひとりが、「いのちをいただいている」ことに意識的になることで、何かが変わっていくのかなと思いました。
お話に引き続き、革の手縫のデモンストレーションを見せていただきました。
フィラガンと言う発色の良いフランスのロウビキ麻糸(日本のものの5倍のお値段がするそう!)で革を2本の針で塗っていくところを見せていただきました。
糸を針に通して、玉を作らないよりを作ることから、もう私には一体どうなっているのかわからずです。
手縫いや革の切断などに必要な道具も持ってきてくださったのですが、またその道具が美しく、手入れが行き届いているのがわかり、そんな脇役を見ても鮎澤さんの革への愛情が伝わってきます。
参加者の皆さんからは、いろいろな質問も出て、鮎澤さんご自身も良い刺激になったようです。
そして参加者の皆様からは、会終了後、お喜びのメッセージを頂戴いたしました。
現在、鮎澤さんの工房で制作オーダー受付は約2年待ち、オーダーを受けられる時が来たら、鮎澤さんから打ち合わせのためのお葉書が来るそうです。
そんなアナログなやり方も誠実な鮎澤さんらしいな、と感じます。
来年からも年に2回は鮎澤さんのお話を伺う会が開催できそうです。
気になる方はcontactよりご連絡ください。
参考図書 「わたしをひらくしごと」野村美丘 (アノニマ・スタジオ)
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