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ブログ

2021.05.20

Thread colour into the past 展示を終えて

展示が終わって、約2週間。

あらためまして、ご来廊のお客様、また展示後のオンラインをご覧になってくださった方々へ心よりお礼申し上げます。

ありがとうございました。

展示全作品は、1週間限定で公開しました。

このブログでは、主だった作品のみの掲載になりますが、その代わりに会期中にわたしが拾った、印象に残ったKIMIYO WORKS語録をご紹介することにしました。

こちらを読みながら、展示を思い出していただければ幸いです。

*作品作りに使われる素材に関して

KIMIYO WORKSの作品は、イギリスやフランスを中心とするヴィンテージ、アンテイークの素材を使い、そこに刺繍を施しています。

刺繍は、通常の刺繍糸は殆ど使わず、ミシン糸である100番のドイツ、Mettler及びそれよりも細いフランスのfil a gantのものを使っています。 洋服を縫うための糸が通常60番なので、それよりもかなり細い糸を使うことになります。

これらの糸を使って作品を刺していくための針は、細く、日本では手にはいりません。

イギリスからの輸入針を使いますが、その針は日本の針と違い叩いていないので、容易に折れてしまったり、曲がってしまいます。

今回の展示では20本の針を指し潰しました。

*やりすぎないこと

刺繍のスキルを見せてぎっちり差し込んでしまうと、作品に見る人の気持ちの入る余裕がなくなってしまい、窮屈な作品になってしまいます。 空間を縫い潰していくことは、ある意味簡単なのですが、そこをやりすぎないことが作品作りにおいて一番難しい点です。

またやっつけ仕事をしないこと、これも大事なことです。

一つの作品にあまりにも時間をかけすぎると、「止めるべき点」を見過ごし、わからなくなってしまい、結果としてやっつけ仕事になってしまいます。 ですから止める決断も大切です。

*五感の活用

今まで刺繍というのは出来上がったら、額にいれて、以降は触ることのできないものにしてしまうのが一般的でしたが、今回は、違うアプローチ、すなわち五感をフルに活用して作品を味わっていただきたいという願いがありました。

触ったり、箱に入れて時折蓋を開けて覗いたり、時には中の位置を変えて表情が変わるのを楽しんでほしいと思います。

洋服の中で一番好きな衿とカフス。

不要不急ではあるけれど、あれば心が豊かになる、触ることのできる、五感を刺激してくれる作品に落とし込んでみました。

この衿とカフスのセットが、箱の中にまっすぐ置かれていればお出かけのシーン、そしてちょっと斜めにしてみればワクワクする気持ちを表現したいと思いました。

触って楽しめて、大人の遊び心を満たすように。

立体でありながら、プリントみたいに見えたらとも思いました。

作品 Collar & Cuffs Pink

作品 Collar & Cuffs Green

緑の衿の縁に角張ったアンティークシードビーズを差し込んでいますが、これが光の角度によって光り、作品に彩りを添えてくれます。

このシードビーズが丸かったら、この硬質な光とはまたべつものになったでしょう。

緑は、京都で見つけた漆の糸を使っています。

細い紙に漆を塗った状態の糸は、張りがあり、その特性を生かして四角に糸を留め付けたところ、線に膨らみが出ました。

深い輝きがあり、よく見ると鈍い光が有るのが漆の糸の特徴です。

ですから刺す、というよりは糸を留め付ける、という感覚で制作していきます。

また布と糸の間に違う素材が入ると、しまるのでメタル素材のネームプレートを縫い付けてあります。

素材にこだわりがあるので、素材が揃った時点で、もう制作の半分は終わった気がします。

*下書き

下書きはしません。

その時の感覚を大事にしているので、輪郭を写し取るだけです。

細かく書いてしまうと、刺繍はそれをなぞるだけになってしまうから。

*作品 In the park

In the parkは今回のシグネチャーピースの一点。

ハンティングの情景を描いたヴィンテージの生地、周りを緑色のリボンで囲われた木蓋の上に古いガラスの箱

その中には、ロンドンハイドパークで犬を散歩させたワクワクした気持ちが作品として収められています。

犬を遊ばせるためのボールに見えるパーツは、昔に作ったもの。

いつ使えるかわからないパーツでも、作っておくと、今回のように「あれだ!」と使える日が突然やってきたりすることがあるのです。

昔に作ったパーツで、今回の作品に使用

In the park

*In the wood

森を散歩していて、森の四季が木を通して表現された作品です。

しかも、この木は配置換えが楽しめます。

作者から次の所有者が遊べる余裕が残されている作品になりました。

澄敬一作のガラスのついた木箱が窓のような役割を果たしています。

このガラスの窓の開き具合でもまた見え方が変わってきます。

開いた窓

*無駄の中にある豊かさ

無駄を大事にしています。

作品を見て「一体これは何に使うの?」と聞かれることがあります。

答えは「何にも使わない」

時に、「何にもならないもの」=「無駄なもの」と認識されることもあるかと思います。

でも、この無駄の中に夢があると思いませんか? 例えば、今回のイメージモチーフの一つとなったシューズ型の木製たばこいれ。靴の形をしています。

その小さな木製のシューズには、真鍮や銀の線で細かい装飾が施されています。

煙草の葉入れという目的には何の役にも立たない装飾。

でも、これは「無駄な装飾」でしょうか?

一見無駄なこの装飾が有ることで、所有者にとって人一倍の愛おしさが増すものではないかと思うのです。

必要ではないけれど、あればもっと心豊かに生活できる宝物ではないか、と。

*Shoe 1

今回、ギャラリーからイギリスヴィクトリア時代のSnuff shoe (タバコの葉入れで、特に靴型のもの)をお借りしました。(上記で語ったシューズ型の木製煙草入れのことです)

その中で、イメージを作品に落とし込んだShoe シリーズ。

特に、Shoe 1は、そのSnuff shoeを真上から見て刺繍に落とし込んだもので、一見何なのかわからないが、それが想像する楽しみにつながっていく作品になっています。

しかも、テーマである「過去に糸で色を付けていく」に忠実に、過去を思い出し始めた時は黒い刺繍が、過去を思い出すにつれ、色がつき、鮮やかな赤い刺繍が施されました。

固定してみるのとは違った面白さが生まれています。

Shoe1とアイディアソースのSnuff shoe

Shoe1

Shoe 2とアイディアソースのSnuff shoe 記憶のさざなみとともに

*Bulb

通常であれば額装する作品ですが、あえて軸に飾ってみました。

和の裂地との相性はどうだろうと心配しておりましたが、意外なミスマッチが楽しい作品になったと思っています。

球根を地球に見立てて、球根から芽が出てそれが花になっていく。

球根には、土がついていたり皮がついていたりするものですが、それをシードビーズを重ねることで表現してみました。

昔の植物図鑑のように、文字を入れると画面が締まり、カチッとした感じになります。

球根の先に羽が生えているというなんともファンタジーな世界観ですが、これは今はみんな我慢が必要だけれど、そのうち花も咲き、羽で平和な時代へ飛翔することができるよ、とのメッセージをこめています。 羽には、細いリボンでふわっとさせるための刺繍をかけて、羽の軽やかさ、柔らかさを表現しています。

軸装されたBulb

*ヴァーチャルアトリエ

今回、イメージの一つとして、ギャラリーの片隅にヴァーチャルアトリエのコーナーを作りました。

金のメッシュを薬品で加工し、錆びさせたミニシューズは、残念ながら時間切れになってしまい、作品として展示に間に合わせることはできなかったのですが、皆様が製作途中のイメージを掴んで頂けるヒントになったようで嬉しく思いました。

刺繍の下絵と共に

以上、KIMIYO WORKS語録でした。

実はKIMIYO WORKSは既に来年の個展に向けて走り出しています。

皆様との来年の再会を楽しみにしております。